納得させ、人を動かす1枚を。
はじめに|なぜ“構造化された1枚スライド”が必要か
あなたのプレゼン資料、――「で、結局なにが言いたい?」 と上司に突き返された経験はありませんか。
私も新人時代、30枚のスライドを費やして結論がぼやけ、「大丈夫か、ちゃんと考えたか?」と言われ冷や汗をかいたクチです。
多くのビジネスパーソンが抱える課題は、
- 問題の枠(フレーム)を決められない
- 情報を削れず、構造化できない
- 図解の選択に迷い、時間だけが過ぎる
――という“3重苦”。
しかし裏を返せば、フレーム設定 → 構造化 → 図解選定 のプロセスさえ踏めば、だれでも1枚で「なるほど!」を引き出すスライドが作れます。
フレーミングから図解までの8ステップのスライド作成ガイドライン
以下に、「フレーミングから始まる構造化スライド作成ガイドライン」を マニュアルとして活用可能な形式で提示します。
目的は “構造化された1枚スライド”をだれでも迷わず作れること です。
構造化スライド作成|8ステップのプロセス
🎯 想定成果物
- スライド1枚で「問題の構造」と「伝えるべき意思決定材料」が明快に伝わるもの
- 経営層・クライアント・上司に「なるほど」と思わせ、議論を前進させる図解
【全体フロー】フレーミングから図解までの8ステップ
ステップ | ゴール | 主なアウトプット | 所要時間目安 |
---|---|---|---|
① フレーミング仮置き | 問題の枠と視点を仮設定 | 1行問題文+対象・非対象リスト | 10分 |
② 全体構造整理(S) | 要素と階層を洗い出す | システム構成メモ | 10分 |
③ 関係と因果(R) | 要素間の因果関係を確認 | 手書きCLDラフ | 10分 |
④ 図式案を発散 | 図解の候補を描く | 2〜3案のラフ図 | 15分 |
⑤ スコア評価&選定 | 最適な図を1つに絞る | 評価スコア表+選定図 | 10分 |
⑥ スライドに清書 | スライド1枚へ整形 | 完成スライド(PowerPoint) | 20分 |
⑦ フィードバック | 口頭 or Slackレビュー | コメント+修正 | 10分 |
⑧ 再帰改善 | 問い直し or 表現改善 | 最終版 | 5分〜適宜 |
🔍 各ステップ詳細ガイド
【① フレーミング仮置き】
目的:まず「この報告は何のために誰に向けて書くのか」を明確にします。
作業:
- 下記フォーマットに記入:
「○○(誰)が、△△(判断や意思決定)するために、□□(情報や背景)を整理する」
- 含める情報/除外する情報を色分けでメモ
- 視点(誰の立場か)を「CEO視点」「現場視点」などで明示
【② 全体構造整理(Systems)】
目的:全体像と構成要素を把握する
作業:
- 全体の構成要素を洗い出す(例:人、組織、プロセス、資源)
- 「部分と全体」の関係をマッピング
- Icebergモデル:事象→パターン→構造→前提で整理すると効果的
【③ 関係と因果を描く(Relationships)】
目的:何が何に影響しているかを整理する
作業:
- 手書きで矢印つきの因果マップ(CLD)を描く
- 時間遅延・ポジティブ/ネガティブの関係に注意
- フィードバックループがあるかもチェック
【④ 図式案を発散する】
目的:複数の図解パターンを出しておく
候補例:
図式 | 用途 | 使える時 |
---|---|---|
2×2 マトリクス | ポジショニングや比較 | 軸が明確なとき |
因果ループ図(CLD) | システム構造 | 複雑な影響関係がある |
ロードマップ | 時系列/変化 | フェーズ推移がある |
ユーザージャーニーマップ | 行動・感情の流れ | UX/体験重視時 |
作業:各フレームに対して最低2種類の図解案をラフで描く。
構造化の表現方法・種類は本ブログでも解説しています!!
【⑤ スコアリング&選定】
目的:一番「伝わる」図を選ぶ
評価項目(各5点満点):
評価項目 | 説明 |
---|---|
目的適合度 | 目的に沿っているか? |
因果説明力 | なぜそうなるかが伝わるか? |
共感度 | 上司やクライアントの視点で理解しやすいか? |
情報の網羅性 | 必要な要素が過不足なく含まれているか? |
作業:スコア表に点数を記入 → 合計得点で選定。
【⑥ スライド清書】
目的:一発で伝わるスライドを完成させる
ポイント:
- タイトルは結論を書く(例:「○○により□□が可能に」)
- 図は左 or 中央に大きく配置、文字は最小限に
- 色は 2色+アクセント(赤など) に抑える
- 注釈・凡例は図の外に整理して書く
【⑦ フィードバックを得る】
目的:スライドの伝達力を高める
方法:
- Slack、ミニレビュー、同僚レビューなどでフィードバックをもらう
- 質問が出た点や理解しづらかった点をメモ
【⑧ 再帰改善】
目的:必要に応じてフレーム・図解を再設計
方法:
- なぜ伝わらないのか?→「Why?」を3~5回問う
- DSRP構造の見直し(Distinctions/Relationships/Perspective)
- フレーミングごと再定義もOK(目的がズレてたら最初からやり直す)
✅ 成果チェックリスト(完了前の最終確認)
- 1スライドで要点が「一目で」伝わるか?
- タイトルに結論が明示されているか?
- 見せるべき要素と、削った要素の意図が説明できるか?
- 視覚的な構造(グループ・強調・順序)に整合性があるか?
- ステークホルダー(上司・クライアント)の視点で納得できるか?
まとめ
フレーミングは「地図を描く前に、どの国を描くかを決める作業」です。
スライドは、描いた地図の「1枚の縮図」です。
本ガイドラインは、抽象から具体へ降り、視点を行き来しながら最も効果的な図解に着地するためのプロセスです。
おわりに|明日から“1枚で伝える”人材へ
構造化スライドづくりは、単なる資料作成スキルではありません。
「対象を切り取り、全体構造を捉え、最適な図解を選ぶ」――この思考回路こそが、戦略立案・業務改善・コンサルティングの基盤になります。
今日からは、
- フレームを立ててから手を動かす
- 因果と構造を分けて考える
- 図解を複数発散し、評価軸で選ぶ
という流れを習慣化し、たった1枚で議論を前進させるビジネスパーソンを目指しましょう。
✅まとめ(重要3行)
- フレーム設定 → 構造化 → 図解選定 が“迷わない1枚”の黄金ルート。
- 8ステップ業務ガイドを使えば、初学者でも再現性高く作成可能。
- 「1スライドで結論を語る力」が、あなたの提案を一段上のステージへ押し上げる。