構造化の種類③循環

何度も繰り返す問題に、構造というレンズを。
複雑な因果に、突破の地図を。

本シリーズの目的

「構造化」と一言で言っても、その方法や切り口は実に多種多様です。
だからこそ、同じ情報を扱っていても、整理の仕方や見せ方には“個人差”が生まれます。そしてその違いが、情報の「分かりやすさ」や「伝わりやすさ」に大きく影響してきます。
特にビジネスやリサーチ、プレゼンの現場では、この“構造化の巧拙”が、相手の理解度や意思決定のスピードすら左右します。

このシリーズでは、そんな“構造化の迷子”にならないために、情報整理の考え方を「型」に分けて整理していきます。

まずは、「どんな切り口で構造化できるのか?」を大きく分類し、それぞれの考え方や使いどころをわかりやすく解説していきます。

目次

循環は因果・時間・選択を捉え、読み解く力が問われる

ビジネスで起きている課題の多くは、一過性ではなく「繰り返される構造」を持っています。例えば、業務負荷が高い → ミスが増える → 信頼が下がる → 業務が属人化する → さらに負荷が高まる、といった悪循環。逆に、学び → 成果 → 承認 → モチベーション向上 → 更なる学び、という好循環もあります。

このように循環は、単なる反復ではなく因果関係・選択・時間の要素が絡む複雑な構造体です。
構造化によって初めて、どこに介入すべきかが明確になります。


1. 循環を構造化する目的

目的カテゴリ説明
✅ 問題の根源分析循環構造を明らかにすることで、
症状ではなく原因に対処できる
✅ 改善と強化好循環を意図的に設計・促進するための戦略が
立てられる
✅ 合意形成図示化により、チーム内の認識を一致させやすくなる
✅ ナレッジの再利用成功/失敗パターンを定型化し、他領域へ応用できる

2. 構造化のための5ステップ

STEP
対象の明確化
  • テーマ設定:どの領域の循環を扱うか(例:業務、習慣、戦略、医療行動など)
  • スコープ決定:どの範囲・期間を可視化対象とするか
STEP
要素の洗い出し
  • 循環を構成する要素をリストアップ
  • 例:行動、結果、感情、環境要因など
STEP
要素間の関係性を特定
  • 時間的順序、因果(A → B)や影響方向(正/負)を明示
  • 強化 or 抑制のフィードバックループを設計
STEP
循環の分類(構造タイプ)

循環の性質を分類:
・単純反復
・因果強化
・成長スパイラル
・分岐構造
・周期性

STEP
アウトプットイメージに可視化

PDCA図、因果ループ図(CLD)、スパイラルモデル、分岐シナリオ図、周期チャートなど


3. アウトプット形式のマトリクス

循環の可視化形式は、「構造タイプ」×「循環関係の意味」によって選び分ける必要があります。以下にMECEに分類したマトリクスを提示します:

→ 構造×関係日時系/周期因果/強化行動/効果制約構造分岐/選択
単純循環型PDCA、季節業務習慣ループチェックリスト型
因果ループ型売上↔広告↔認知ストレス→悪化コスト削減→品質低下分岐要素付き循環
スパイラル型成長モデル、キャリア形成依存症構造学習→承認→継続負のスパイラル△(漸進的選択)
分岐型△Yes/No型意思決定構造継続or中断条件選択多様な帰結ルート
周期型経済サイクル、睡眠リズム

循環は「構造」と「関係」の両面から分析することで初めて理解できます。


4. 可視化の形式一覧

形式特徴使用場面
フローチャート一方向のステップ構造業務プロセス、手順書
因果ループ図(CLD)正負の因果関係を視覚化システム思考、組織分析
🌀 スパイラル図成長・悪化の変化を表現キャリア設計、習慣化
周期チャート時間に沿った構造季節性業務、フェーズ戦略
🧠 分岐シナリオ図選択による展開の違いを表現意思決定支援、選択設計

結語:構造化は「見える化」では終わらない

循環を構造化する真の目的は、可視化そのものではなく、介入と変化の起点を発見することにあります。

「なぜ同じ問題が繰り返されるのか?」「どこで好転のスイッチが入るのか?」── これらを明らかにするためには、事象を“構造”として捉え、関係性・因果性・時間性・選択肢といった要素を交差的に分析する必要があります。

その結果として得られるのが、循環に対する理解の深度と、変革への突破口です。


✅まとめ

循環は因果・選択・時間構造を持つ複雑な仕組みである。
構造タイプ×関係性で整理し、目的に合った図式化が必要。
構造化は「理解」ではなく「介入」のために行うものである。

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